シナリオをつくる人へ
自分でシナリオをつくってみたい人のためのガイドです。創作に決まったルールはないと思っているので、このガイドを無視して作品をつくれるならそれに越したことはないはずです。勝手がわからないからこその「突飛さ」みたいなものは、始めたての人だけの専売特許です。それを楽しんでみるのもいいと思います。
この項目では、シナリオと、その土台となる世界観をつくって誰かに楽しんでもらうことを目標にして、その方法を探していきます。ある程度オリジナリティとクオリティをもたせることを念頭に置いて、カメレオンTRPGならではのシナリオのつくり方を話すので、すこし凝った内容になります。
まずアイディアを思いついてください。こればかりは個人の思い付きなので話すことがほぼありません。でもこれはオリジナリティの根源になるので頑張ってほしいです。日常的に創作のネタに敏感になって、思いつくたびにメモをしておくといいかもしれません。小さなものでもいいので、なにか面白い「ゲーム性」「物語のテーマ」「プレイヤーを驚かせるトリック」など、創作の種になるアイディアがあれば、そこを手掛かりにしてシナリオを構成しましょう。
つぎに、「このシナリオを通じてなにがやりたいのか」を常に意識するといいかもしれません。よくあるものだと、「いいストーリーを語りたい」「面白いシステムで、ゲーム性を楽しんでほしい」「プレイヤーのロールプレイをうまく引き出したい」とかでしょうか。なにかしらの目的意識を持っておくと、シナリオを構成していくときに迷わなくて済むはずです。この目的は、持っているネタから連想してもいいですし、ネタを豊富に持っていたり、思いついたりするのが得意なら、目的にあわせてネタをつくるのも楽しいと思います。
これでネタと、コンセプトが出そろいました。それではこれらを実現しましょう。カメレオンTRPGでは、世界観を自分で勝手につくることができます。つまり、自分のやりたいことに合わせて勝手に魔法でもなんでも”でっちあげる”ことができるのです。シナリオに使うネタを実現するとてもお手軽な方法として、「それができるモンスターをつくる」「それが実現する魔法的な力をつくる」「それが成立する自然現象を設定する」などがあります。
具体例を交えて話すために、シナリオ「モジグサリ」を例にします。もちろんネタバレを含みますので、モジグサリをプレイヤーとして遊ぶ予定のある人は、プレイ後にもどってきてください。
モジグサリをつくったとき、きっかけになったのは「絵しりとり」でした。友達と話していた時に、話題に上がったそれになんか使えそうだなという印象を抱きました。言葉じゃなくて、なにか視覚的にわかるような形でするしりとりというのが面白いと思ったのです。これが上で説明したネタにあたります。そして、目標もそれに引きずられるかたちで、ゲーム的な面白さを求めていくことになります。
これでネタとコンセプトが出そろいました。では、ネタをシナリオに反映させていきます。視覚的なのが面白いという効果を、あくまでシナリオの世界で再現します。つまり、キャラクターが(キャラクターにとっての)実物を触れてしりとりをつないでいくゲームにします。
それじゃあ、これを実現できる設定をつくりましょう。詳しい理由は忘れてしまいましたが、この時僕は和風の世界観をつくりたかったので、それに沿った設定にします。しりとりに昔風の言い方がないかをしらべてみて「モジグサリ」という単語を見つけました。すると鎖という要素から、封印という発想がでてきます。じゃあ、なんかやばいやつを封印するための儀式「モジグサリ」に、プレイヤーキャラクターが巻き込まれるシナリオにしよう、と。かなり形になってきましたね。しりとりは良くも悪くもずっと遊んでられるゲームです。これをシナリオに落とし込むためには、しりとりに「目的」「指向性」を持たせないといけないと思いました。経由しなければならない単語や、ゴールとなる単語が必要になり、そしてそれらを用いて封印されている化け物を決めないといけません。和風の世界観に合わせることを考えて、三種の神器とヤマタノオロチにそれぞれの役割を担ってもらいます。こういうシナリオのなかの鍵になるアイテムや怪物は、インターネットで調べたりするとたくさん出てきます。その背景から着想が得られることも珍しくありませんので、積極的に調べてみるといいかもしれません。
話を戻します。ゲーム性を楽しんでもらうのが目標なので、背後のストーリーは軽めにしました。より力を入れたいのはゲーム的な内容と演出です。まず内容について。ゲームをプレイしてもらうのに、単調で退屈に感じられてはよくないはず。飽きさせないためにPLCが儀式をするとき、「プレイヤーが考えないといけないこと」がそれぞれのエリアで異なるようにデザインしました。次は演出について。ゲームを盛り上げるかっこいい悪役は欠かせません。そこで、「神話の怪物」というところに注目します。神様ですら策を労して戦うようなやばいやつなんだぞ、って、プレイヤーにアピールするわけです。具体的には二つの手段を使いました。一つ目は異常事態です。川の水が重力じゃない何らかの力によって動き続けていたという事実を知って、プレイヤー(とキャラクター)は常識のずれから恐怖を感じるはずです。二つ目はもっと直接的に、神話の怪物なんだぞ!って言います。しかし事前に知ってしまうと興覚めですし、こんなシンプルな方法を使うとき、第三者の語りによって説得力を獲得するのは大切です。だから、なまりを使いました。聞いても分からない言葉でじいさんにしゃべらせておいて、いざオロチに出くわしたときにキャラクターが理解するのです。あの言葉の意味は...と。世界観を表現するのも大事な演出です。
このシナリオのために僕は和風のフリーBGMをかき集めました。音楽は印象とかスケール感を出すのに必須の最強アイテムなのです。さて、ここまでできたら誰かに遊んでもらいます。テストプレイによって穴が見つかったり、より面白いアイディアが出てきたりするのでこの過程は馬鹿にできません。今回は、しりとりをしなきゃいけないとプレイヤーに気づかせるための要素が存在しないことが発覚。少し悩んだ末に、最初にモジグサリ儀式を行った陰陽師の手順を逸話として話すことでほのめかすようにしました。
以上のように、ネタとコンセプトから始まって、そこに表現したい雰囲気や世界観をあてはめるようにしてシナリオをつくりました。ポイントとしては、ネタとコンセプトの相性をよくすることと、できるだけ演出を凝ることでしょうか。演出はいいBGMを流しておけばとりあえずなんとかなりそうな気もします。
以上がカメレオンTRPGにおけるシナリオのつくり方の、あくまで一例です。参考になれば幸いです。